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物理/熱と熱現象(3)熱力学の第二法則
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=熱と熱現象(3) 熱力学の第二法則 = 第二種永久機関の失敗やカルノーの熱機関の効率の研究から,<br/> 熱力学の第2法則が認識されるようになり、やがて熱現象の基本原理として認められた。<br/> *[[wikipedia_ja:ニコラ・レオナール・サディ・カルノー |ウィキペディア(ニコラ・レオナール・サディ・カルノー)]] == 熱機関と効率 == 熱機関とは、熱エネルギーを利用して外部に仕事をおこない続ける機関である。<br/> 1)高温の熱源からの熱エネルギーで、<br/> シリンダー内の気体や液体(作業物質という)を加熱・膨張(液体の場合は気化)させ、<br/> 作業物質の膨張する力で、シリンダーにはめたピストンを押し出し、外部への仕事をさせる。<br/> 2)この作業物質を、低温熱源で冷却・収縮させて元の状態に戻す(気化した液体の場合液体に戻す)。<br/> この時、シリンダーにはめたピストンは作業物質の収縮力により、引き込まれる。<br/> この時もピストンは外部に仕事をする。 こうして、ピストンは1往復してもとの位置に戻る。1往復をサイクルという。<br/> 3)これを繰り返し、サイクル運動を続ける。<br/><br/> 最初に発明された熱機関は、蒸気機関であった。 *[[wikipedia_ja: 蒸気機関|ウィキペディア(蒸気機関)]] 初期の熱機関は大きな熱エネルギーを使いながら取出す仕事は小さく、効率が大変悪かった。<br/> 効率のよい熱機関を作るにはどうすればよいか。<br/> 効率はどこまで上げられるか。<br/> 高温の熱源から受け取った熱エネルギーを, すべて外部への仕事に変換出来ないだろうか(熱力学の第一法則には違反しない)。<br/> これらは重大な関心事になった。<br/> この問題を根本的に解決したのはカルノーであった。<br/> 彼は、このような機関は不可能であること、<br/> 彼の考案したカルノー機関が理論上の最大効率機関であることを、<br/> のちに熱力学の第2法則として確立される原理を発見しこれを利用して証明した。 ===準静的過程 === カルノー機関は、後述するように<br/> 4つの過程で1サイクルをなして元に戻り、<br/> この間に高温熱源から得た熱エネルギーの一部を仕事に変える熱機関である。<br/> このサイクルを繰り返し、熱エネルギーをもらいながら、その一部を仕事に変える。<br/> これら4つの過程は、<br/> いずれも<br/> 系の全体は静止(マクロの物体として静止)にきわめて近く、<br/> さらには熱平衡にも極めて近い状態を保ちながら変化させ、<br/> その変化速度をどんどん遅くして行きときの、極限の過程を考えている。<br/> これを'''準静的過程'''(quasi-static process) という。<br/> この過程は、<br/> 「マクロには静止し、熱平衡を保ちながら、無限の時間をかけて状態変化していく過程」<br/> と考えられる。<br/> 熱平衡のある系は温度や圧力などの状態量がさだまるので、この過程は状態量の推移で 正確に記述できることになる。<br/><br/> しかし、厳密には、常に静止し、熱平衡状態を完全に保つならば<br/> 系は力学的にも熱的にも全く変化は起こるはずがない。<br/> そのため、準静的過程は、厳密には矛盾を含む表現であり、もちろん実現不可能である。<br/> マクロな観測では検出できない程度の非平衡状態を持ちながら、長時間かけて変化していく過程と考えればよいだろう。<br/> この過程を想定した系の挙動は、大変簡潔となり、<br/> しかも仮想の挙動は、必要な時間をかけて、ゆっくり状態変化させれば任意の精度で実現できるので、<br/> 熱機関の挙動や効率を調べるのに大変有用である。<br/> カルノーの熱機関の研究では、要の概念になっている。<br/> 準静的に系を変化させるには、<br/> 系には無限小(注1を参照のこと)の力や<br/> 無限小の仕事、熱エネルギーを与える必要がある(注2を参照のこと)。<br/><br/> (注1)すでに説明したように、<br/> どんな正の実数より小さく、どんな負の実数よりも大きい数のこと。<br/> もちろん、実数の中にはこのような数は存在しない。<br/> 物理学ではこの数を自由に使ってきたが、厳密性を重んじる数学では否定してきた。<br/> しかし、近年、実数に無限小の数を加えた、数の体系が合理的に導入された。<br/> 無限小の数はたくさんあり、これと実数を集めた数の体系では、実数と同じ4則演算ができる。<br/> 無限小の数を用いると、微積分学は、収束や極限といった煩わしい手順をとらないで 再構築できる。<br/> 微積分の発見当初は、直感的に無限小の数を利用していたが、厳密性がなく、<br/> 現在は、収束と極限概念に基づく微積分が広く使われている。<br/> 無限小を利用した微積分学の再構築は、[[wikipedia_ja:超準解析 |超準解析]]と呼ばれる。<br/> (注2)系の体積を準静的に変えるには、系の圧力と無限小異なる外力を作用させる。<br/> 外力が無限小だけ小さい場合には、系は、無限にゆっくりと膨張し、<br/> 無限小だけ大きいと、無限にゆっくりと圧縮する。<br/> 系に準静的に熱を与えるには、系の温度と無限小だけ異なる熱源と接触させればよい。<br/><br/> 準静的という概念を用いると、すでに述べたいくつかの命題の表現が簡潔になる。<br/> 例えば、<br/> 「1.2.3.1 系の体積を変えるために外から加える仕事について」の命題は次のように記述できる。<br/> 命題;<br/> 圧力Pの系を、外部から力を加えて準静的に体積を無限小dV変化させる時、<br/> 外力の行う仕事は W=ーPdV である。<br/><br/> ==== 可逆過程==== ある過程が、外界に何の変化も残さずに、無限小のエネルギーで逆の過程をたどって、 元の状態に戻すことができる時、'''可逆過程'''(reversible process)という(注を参照のこと)。<br/> 詳しくは、 *[[wikipedia_ja:可逆|ウィキペディア(可逆)]] (注)可逆過程であることが示せれば、<br/> 摩擦がなく、必要な場合には、外界と孤立した状態を作れるならば、<br/> いくらでも小さなエネルギーを用いて、時間はかかるが、逆の過程をたどらせることができる。<br/> ====準静的過程と可逆過程の関係 ==== 命題;準静的で摩擦のない過程は、可逆である。<br/> 証明;<br/> 系に準静的な変化をさせるためには、<br/> ⅰ)系の圧力と無限小異なる圧力を外部からかけて、<br/> 無限にゆっくりと体積変化をさせるか、<br/> ⅱ)系の温度と無限小異なる外部熱源と接触させる<br/> 必要がある。<br/> 準静的な過程は、これらを組み合わせた過程である。<br/> そこで、準静的過程が可逆である事を示すには、上記の2つがいずれも可逆であることを示せばよい。<br/> ⅰ)は、体積変化の際に摩擦がなければ、可逆である。<br/> 系の圧力Pと無限小だけ異なる圧力 $P+\epsilon$ を外部から、かける。<br/> 摩擦がなければ、系は無限にゆっくりと体積を変える。<br/> 体積変動量を$\delta V$とすると、この間外力のなす仕事は $-P\delta V$である。<br/> 次に外圧を $P-\epsilon$ に変えると、逆の体積変化がおこるので、<br/> その量が$-\delta V$になるまでこの外圧を保ち、<br/> $-\delta V$ に達したら、外圧を $P$ にして変化を止める。<br/> この間に外力のなす仕事は $-P\delta V$ である。<br/> すると、系は元の状態は戻り、<br/> しかも外力のなす仕事は合計0なので、外部に何の影響も残していない。<br/> 従ってこの過程は可逆である。<br/> ⅱ)は可逆である。<br/> 何故なら、<br/> 系を、系の温度と無限小量だけ温度の高い熱源に接触させ、<br/> 熱エネルギーを非常にゆっくりと系に移動させたとする。<br/> 次に、系に無限小の熱エネルギーを与えて系の温度を熱源より無限小高くすれば、 熱エネルギーは、系から熱源にむけて流れ、もとの状態に戻すことができる。<br/> 従ってこの過程は可逆である。<br/><br/> 命題;準静的でなくても可逆の過程は存在する。<br/> 何故なら、ニュートン力学に支配される運動は可逆である。<br/> 例えば、摩擦のない理想的環境下の振り子運動は、同じ振動を永遠に続けるので 可逆である。<br/> しかし、物体として動いており、準静的でない。<br/> ===カルノー機関、カルノーサイクル=== *[[File:GENPHY00010303-01.jpg|right|frame|図 カルノーサイクルの状態遷移図]] 図を参考にしながら読んでください。<br/> カルノーが発見した熱機関は、<br/> ①準静的な等温膨張<br/> $\quad$理想気体(nモルとする)の温度を高温熱源の温度 $T_M$ と等しくしてから、<br/> $\quad$高温熱源に接触させ、準静的に等温膨張させる。<br/> $\quad$状態量は、 $pV=nRT_M$ を満たしながら図の点1から点2まで変化する。<br/>$\quad$この時作業物質は外部に仕事 $W_{1,2}$ をする。<br/> $\quad$その仕事と等しい熱エネルギーが高音熱源から気体に流れる。<br/> ②準静的な断熱膨張<br/> $\quad$気体を熱源から離し、準静的に断熱膨張させる。<br/> $\quad$準静的な断熱膨張なので状態量は $pV^{\gamma}=p_2V_2^{\gamma}$ を満たしながら、点2から点3まで大変ゆっくりと移動する。<br/> $\quad$この間、作業物質は外部に仕事 $W_{2,3}$ をする。<br/> $\quad$この仕事だけ気体は内部エネルギーを失い温度を下げる。<br/> ③準静的な等温圧縮<br/> $\quad$気体の温度が低温熱源の温度 $T_m$ に等しくなったら、<br/> $\quad$気体を低温熱源に接触させて、<br/> $\quad$今まで取り出した仕事の一部を用いて気体を準静的に圧縮して行く。<br/> $\quad$準静的な等温圧縮なので、状態量は $pV=nRT_m$ を満たしながら図の点3から点4まで大変ゆっくりと移動する。<br/> $\quad$圧縮によって気体の温度が低温熱源より無限小大きくなると、<br/> $\quad$熱エネルギーが気体から低温熱源に流れ、気体は低温熱源と等しい温度を保つ(等温圧縮)。<br/> ④準静的な断熱圧縮<br/> $\quad$準静的な断熱圧縮をして、気体の体積を $V_3$ まで減らす。<br/> $\quad$この時点で気体を低温熱源から離す。<br/> $\quad$この間、気体の状態量は $pV^{\gamma}=p_4V_4^{\gamma} $ を満たしながら、図の点4から点1まで移動する。<br/> $\quad$今まで取り出した仕事の一部を用いて準静的に断熱圧縮して、<br/> $\quad$①の初めの温度と体積に戻す。<br/> $\quad$実は断熱圧縮で初めの状態に戻るように $V_3$ は決めておく。<br|> という4つの過程からなるサイクルをくりかえす装置である。、<br/> '''カルノー機関'''と呼ばれる。<br/> この機関のサイクルを、[[wikipedia_ja:カルノーサイクル|カルノーサイクル]] という。 ==== ①準静的な等温膨張で気体のする仕事 ==== 温度 $T_M$ を保ちながら理想気体は準静的に膨張するので<br/> この過程のどの時点でも状態方程式 $pV=nRT_M=constant$ をみたす。<br/> (V,p)はこの双曲線上を、点1から点2まで、非常にゆっくりと移動していく。<br/> 従って、$p_1V_1=p_2V_2 \qquad \qquad \qquad (1)$ この時気体がおこなう仕事を求めよう。<br/> 今、この線上の一点$(V,p)$から、$(V+dV,p+dp)$(dV,dpは無限小)まで膨張する間に気体のする仕事は、<br/> すでに証明したように、$pdV$ <br/> 故に点1から点2まで膨張する間に気体のする仕事は<br/> $W_{1,2}=\int_{V_1}^{V_2}p dV$(注を参照のこと)<br/> $\quad$ 状態方程式から、$p=\frac{nRT_M}{V}$ なので<br/> $=\int_{V_1}^{V_2} \frac{nRT_M}{V}dV=nRT_M\int_{V_1}^{V_2} \frac{1}{V}dV$<br/> $\quad$ $\frac{1}{V}$ の原始関数(微分すると$\frac{1}{V}$ になる関数)は<br/> $\quad$$\log_{e}V$なので、良く知られた微積分学の基本定理から<br/> $=nRT_M[\log_{e}V]_{V_1}^{V_2}$<br/> $=nRT_M(\log_{e}V_2-\log_{e}V_1)=nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}\qquad (2)$<br/> 温度が変化しないので、理想気体の内部エネルギーは変化していないので、<br/> 熱力学の第一法則から、<br/> 気体のした仕事と同量の熱エネルギーを高温熱源からもらっていることが分かる。<br/> $Q_1=W_{1,2}=nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}\qquad \qquad (3)$ (注)<br/> ====②準静的な断熱膨張で気体のする仕事 ==== 準静的な断熱膨張で気体の状態変数は<br/> $pV^{\gamma}=p_{2}V_{2}^{\gamma}=constant$<br/> を満たしながら、図の点2から点3まで、非常にゆっくりと移動していく。<br/> 従って $p_2V_{2}^{\gamma}=p_3V_{3}^{\gamma}\qquad \qquad (4)$<br/> この過程でも体積は増加するので、気体は外部に正の仕事をする。<br/> この量は、最初の過程の時と全く同じように考えれば、次のようになることが分かる。<br/> $W_{2,3} =\int_{V_2}^{V_3}pdV =p_{2}V_{2}^{\gamma}\int_{V_2}^{V_3} {V^{-\gamma}}dV$<br/> $\quad$この非積分関数の原始関数は $\frac{1}{1-\gamma}V^{1-\gamma}$ なので、<br/> $=p_{2}V_{2}^{\gamma}[\frac{1}{1-\gamma}V^{1-\gamma}]_{V_2}^{V_3} =\frac{p_{2}V_{2}^{\gamma}}{1-\gamma}(\frac{1}{V_{3}^{\gamma-1}-\frac{1}{V_{2}^{\gamma-1}$<br/> $\quad$ $p_{2}V_{2}^{\gamma}=p_{3}V_{3}^{\gamma}$ なので<br/> $=\frac{p_{3}V_{3}^{\gamma}}{1-\gamma}\frac{1}{V_{3}^{\gamma-1} -\frac{p_{2}V_{2}^{\gamma}}{1-\gamma}\frac{1}{V_{2}^{\gamma-1} =\frac{1}{1-\gamma}(p_3V_3-p_2V_2)=\frac{1}{\gamma-1}(p_2V_2-p_3V_3)$<br/> $\quad$$p_2V_2=nRT_M,p_3V_3=nRT_m$ なので、<br/> $W_{2,3}=\frac{nR(T_M-T_m)}{\gamma-1}\qquad \qquad (5)$ <br/> 断熱変化なので、気体の受け取った熱量は<br/> $Q_2=0 \qquad \qquad \qquad (6)$ ====③ 準静的な等温圧縮のとき気体が外からしてもらう仕事 ==== ①の場合と同様に出来る。<br/> 等温圧縮なので、この過程中、<br/> 状態量は $pV=nRT_m $を満たしながら図の点3から点4までゆっくり移動する。<br/> 従って、$p_3V_3=p_4V_4\qquad \qquad \qquad (7)$<br/> この間、気体は、外から<br/> $W_{3,4}=nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4}\qquad \qquad (8)$<br/> だけ仕事をしてもらい、それと同量の熱エネルギーを低温熱源に与える。<br/> 言い換えると、気体は低温熱源から<br/> $Q_3=-nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4}\qquad \qquad (9)$<br/> の熱エネルギーをもらう。 ====④準静的な断熱圧縮==== ②準静的な断熱圧縮 と全く同じようにしてできる。<br/> 気体が外から仕事をしてもらい、<br/> 図の点3の状態から点1まで準静的に断熱圧縮する。<br/> 従って、$p_4V_{4}^{\gamma}=p_1V_{1}^{\gamma}\qquad \qquad \qquad (10)$<br/> この時外から気体がしてもらう仕事は、<br/> $W_{4,1}=\frac{nR(T_M-T_m)}{\gamma-1}\qquad \qquad (11)$ <br/> なお、断熱変化なので、気体が受け取る熱量は<br/> $Q_4$=0\qquad \qquad \qquad (12)$ ====④ 1回のサイクルのまとめ熱量==== 一回のサイクルで気体が外部にした仕事 $W$ は<br/> $W=W_{1,2}+W_{2,3}-W_{3,4}-W_{4,1}=nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}+\frac{nR(T_M-T_m)}{\gamma-1}-nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4}-\frac{nR(T_M-T_m)}{\gamma-1}$<br/> $=nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}-nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4}<br/> 故に<br/> $W=nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}-nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4}\qquad \qquad (13)$<br/><br/> 一回のサイクルで気体が受け取った総熱量 Q は<br/> $Q=Q_1+Q_2+Q_3+Q_4=nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}-nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4} =W\qquad (14)$<br/><br/> 高温熱源から気体に流れ出た熱エネルギー$Q_1=W_{1,2}=nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}$は、<br/> $nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}-nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4}$が外部への仕事に転化し、<br/> 残りの$nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4}$が低温熱源に吸収されたことになる。<br/> 従って、この機関の効率$\kappa$(仕事への転化エネルギー/高温熱源が使ったエネルギー)は<br/> $\kappa=\frac{nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1}-nRT_m\log_{e}\frac{V_3}{V_4}}{nRT_M\log_{e}\frac{V_2}{V_1} }=1-\frac{T_m}{T_M}\frac{\log_{e}V_3/V_4}{\log_{e}V_2/V_1}\quad (15)$<br/> ここで、<br/> 補題;$\frac{V_2}{V_1}=\frac{V_3}{V_4}$<br/> 従って、$\kappa=1-\frac{T_m}{T_M}=\frac{T_M-T_m}{T_M} \qquad \qquad (16)$<br/><br/> 証明;<br/> $p_1V_1=p_2V_2 \qquad \qquad \qquad (1)$<br/> $p_2V_{2}^{\gamma}=p_3V_{3}^{\gamma}\qquad \qquad (4)$<br/> $p_3V_3=p_4V_4\qquad \qquad \qquad (7)$<br/> $p_4V_{4}^{\gamma}=p_1V_{1}^{\gamma}\qquad \qquad \qquad (10)$<br/> なので、これらの4式の左辺の積は、右辺の積に等しい。<br/> $p_1 V_1 p_2 V_{2}^{\gamma}p_3 V_3 p_4V_{4}^{\gamma} =p_2 V_2 p_3 V_{3}^{\gamma} p_4 V_4 p_1V_{1}^{\gamma} $<br/> 両辺を$p_1 p_2 p_3 p_4 V_1 V_2 V_3 V_4$ で割ると、<br/> $\frac{V_{2}^{\gamma-1}}{V_{1}^{\gamma-1}}=\frac{V_{3}^{\gamma-1}}{V_{4}^{\gamma-1}}$<br/> これより、所望の結果を得る。<br/><br/> ====カルノーの定理==== 熱力学の第2法則を用いると、<br/> カルノーの定理「この機関の効率は作業物質によらず同じであり、両熱源の温度だけで決まる」、<br/> 「カルノー機関より高効率な熱機関は存在しない」<br/> ことが論証できる。 *[[wikipedia_ja:カルノーの定理 (熱力学)|ウィキペディア(カルノーの定理 (熱力学))]] =====カルノーの定理の証明 ===== =====熱力学的絶対温度===== カルノー機関の効率が両熱源の温度の関数であることを用いて熱力学的絶対温度(作業物質の特性を全く使わない温度)が定義できる。<br/> これらの詳細については本テキストでは扱わない。 === 熱力学の第2法則 === いくつかの異なった定式化があるが、いずれも等価であることが示せる。 トムソンの原理<br/> クラジウスの原理<br/> *[[wikipedia_ja:熱力学|ウィキペディア(熱力学)]] の 「2 熱力学の法則 」の3 および *[[wikipedia_ja:熱力学第2法則|ウィキペディア(熱力学第2法則)]] ===不可逆過程とエントロピー=== ====不可逆変化と具体例==== 可逆過程とは、外界に変化を残さずに最初の状態に戻せる過程のことであったが、現実の殆どの変化は可逆ではない。例えば高温物体から低温物体への熱の移動は、両者を接触させればおこるが、この逆の変化は起こらず、熱移動は不可逆過程である。他の例も考えてみてください。 ====不可逆な熱機関の効率==== 不可逆過程をふくむ熱機関の効率は、カルノー機関の効率よりも常に小さい(カルノーの第2定理)。<br/> これも熱力学の第2法則から導ける。 ====エントロピー==== 高温熱源$T_1$と低温熱源$T_2$を用いたカルノーサイクルでは、<br/> $\frac{Q_1}{T_1}=\frac{Q_2}{T_2} $<br/> が成立する。<br/> 高温熱源$T_1$と低温熱源$T_2$を用いた不可逆過程の熱機関では<br/> $\frac{Q_1}{T_1}<\frac{Q_2}{T_2} $<br/> が成立する。<br/> このことから、エントロピー $\frac{Q}{T}$ という重要な概念が導入された。<br/> 熱はエントロピーが増大する方向に移行する(エントロピー増大則)。<br/> これ以上は、本テキストだは扱わないが、興味のある方は以下を参照のこと。 *[[wikipedia_ja:エントロピー|ウィキペディア(エントロピー)]]
物理/熱と熱現象(3)熱力学の第二法則
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